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埼玉県予防接種センターだより (No 2013-11)

◆予防接種情報

10月31に開催されました第5回厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会の資料です。
(1)予防接種基本計画の項目のうち、研究開発及び生産・流通部会が担当する項目の素案について審議を行い、大筋で合意した。
(2)予防接種基本計画の第5の(2)開発優先度の高いワクチンの項目には、以下の6つのワクチンが明記されることとなった。

●既存のワクチンのうち、改良(混合化)が強く勧められるワクチンとして、
①MRを含む混合ワクチン
②DPT-IPVを含む混合ワクチン
③インフルエンザワクチン(経鼻・経皮等)
④帯状疱疹ワクチン

●新規に開発すべきワクチンとして、
⑤RSウイルスワクチン
⑥ノロウイルスワクチン
原案は11/18に開催される基本方針部会に提出されることとなった。

【第5回厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会 
資料】
  http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000028554.html


◆ 感染症情報

■風疹
10月21日(月)風しんに関する小委員会で以下のような議論がなされました。
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風疹の検査・診断・支援体制の不備が浮き彫りに
 昨日(10月21日)開かれた,第2回風しんに関する小委員会(委員長:五十嵐隆氏,国立成育医療研究センター総長)では,今回の風疹流行における診療,検査態勢の問題が多数指摘された。風疹は,感染症の蔓延防止や国民への注意喚起などを目的とした感染症法の全数届出疾患に位置付けられているが,周期的流行を繰り返す現状では正確な届け出や検査が困難であり,これらの取り組みだけでは風疹の蔓延防止が難しいことがあらためて浮き彫りにされた。患者会代表などからは予防接種率の向上および当事者への支援体制の確立を求める提言が行われた。

首都圏の感染症指定医療機関の受診患者数,前回の流行上回る規模
 加藤康幸氏(国立国際医療研究センター国際感染症対策室医長)は,東京都,神奈川県の4カ所の感染症指定医療機関における成人風疹患者の診療について概説。指定医療機関には特に重症例が多く受診する。以前は小児から学生を中心に流行していた風疹だったが,今回の流行では患者の中心は30歳代の男性で,前回の大流行(2004年)よりも多数の患者が指定医療機関を受診していたことなどを紹介した。同氏は検査診断上の課題として,流行が顕在化しない時点での臨床診断が難しいこと,IgM抗体では発症早期に陰性となる症例が少なくなく,見落とされる場合がある他,非流行期から流行初期の陽性的中率が低いことなどを指摘。成人の場合,学生のように法律上の出席停止措置に伴う登校許可が不要であるため,症状が治まると再診に現れない患者も多く,回復期血清が取れずに最終診断がつかないなどの問題があると述べた。同氏は正確な診断・報告には,1例1例にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による遺伝子検査を実施している麻疹サーベイランスを風疹にも応用していくことが望ましいとの考えを示した。

鹿児島の一事業所の全職員対象の調査,風疹の診断数と届け出数に乖離
 中島一敏氏(国立感染症研究所感染症疫学センター)は,鹿児島県内で実施した風疹の積極的疫学調査について報告。今回の流行で検査診断により風疹と診断された169例のうち,感染症法の届け出に必要な3つの臨床症状(全身性の小紅斑や紅丘疹,発熱,リンパ節腫脹)が全て見られた症例は全体の42%と一部にすぎず,2症状が見られたのが45%,1症状のみも13%存在していた。
 また,風疹の集団発生が起きた同県内の一事業所の全職員660例を対象とした調査(回答率99%)では,全職員652例中,疑い例※を含む有症状者46例のうち,医療機関を受診した人は45例。医療機関で風疹と診断されたのは,このうち35例だったが,実際に感染症発生動向調査に届け出が行われたのは26例であった。届け出が行われなかった理由としては「届け出に必要な要件(臨床3症状など)を満たしていない」などが挙げられ,実際の患者数と届け出数には乖離があることが示唆された。

風疹の検査は自治体次第,今回の流行レベルでの全数PCRは「現実的に困難」
 感染症法では医療機関から保健所に対し風疹や先天性風疹症候群(CRS)の全数報告が義務付けられている。また,麻疹との鑑別が必要になる,あるいは麻疹と臨床症状が似通っているために「麻疹疑い例」として医療機関から行政側に検査依頼が行われている現状がある。
 一方,検査を行う地方衛生研究所の関係者からは,特定感染症予防指針という行政検査の根拠がある麻疹と違い,風疹については個々の判断でボランティア的に実施している自治体が少なくなく, “風疹についてはPCRやウイルス分離検査は行わない”とするところもあるなど,対応に差が生じていることが紹介。中には「麻疹疑い」で行政検査が依頼され,風疹が陽性となった場合でも検査報告書には「麻疹陰性」としか記載されない事例があることも示されるなどサーベイランスの精度に影響する問題も指摘された。
 また,加藤氏からは「風疹の正確な診断には全例PCR」との意見が出されたが,地衛研側関係者からは風疹の現在の流行レベルでは現実的にPCRによる全数検査は困難との見解も示された(調恒明氏,山口県環境保健センター)。風疹の今年初めからの報告数は1万4,000例を超えている。調氏からは,例年全国の地衛研で実施される季節性インフルエンザに対するPCR検査は5,000件程度, 2009年のインフルエンザパンデミックの際では約2万件の同検査が行われたことがあるとの参考情報が提示された。

CRS児支援の課題「不十分な体制が不要な行動制限や差別につながる恐れ」
 風疹による先天障害(先天性風疹症候群:CRS),あるいはCRSの症状はないものの,胎児期の感染による先天性風疹(CRI)については,患児から生後しばらくウイルスが排出されるため,定期的なウイルス学的検査と,結果によっては周囲への感染予防策が必要となる場合もある。 CRSの診断基準は明示されている一方,診断後のフォローアップ検査の指針については,現時点で委員の間でも見解が分かれた。「CRS(CRI)診断後のフォローアップはPCR検査を想定。ウイルス分離には時間,技術,マンパワーの負担が大きい」「PCR陽性イコール感染性ありではない。ウイルス排出の判断は,デリケートな扱いが必要になってくる」などの意見が出された。参考人として出席した岡部信彦氏(川崎市健康安全研究所長)ら複数の委員からは「検査および支援体制が不十分な場合,不要な行動制限や,無用な差別につながる」との懸念が示された。今回の流行を受け,最近立ち上げられた風疹およびCRSの研究班の研究代表を務める大石和徳氏(国立感染症研究所感染症疫学センター所長)は「現在の行政検査の根拠は,研究班の調査事業でカバーできると考えている。厚生労働省から自治体への通知があるとなおよいのでは」との見方を示した。CRIについては「CRSと異なり“(全数把握疾患の)5類感染症に当たらない”との理由で研究班の調査対象と認められていない。議論が十分でないところもある」と指摘した。

CRS児の家族「行政の相談体制確立の具体的目標を示してほしい」
 同委員会では,来年度以降の感受性者への予防接種を含む中長期的な施策も話し合われるが,既に今回の流行で約20例のCRSが報告されており,今後さらに報告数が増えると予想されている。妊娠初期に風疹に感染し,2012年10月に出産した長女がCRSと診断された保育士の西村麻依子氏(風疹をなくそうの会『hand in hand』共同代表)は,保育の現場では厚労省による「保育所における感染症対策ガイドライン」(下記「関連リンク」参照)が十分浸透していない問題を指摘。職員や関係者の予防接種歴の確認や接種率向上などを含めた具体的な取り組みが必要と提言した。
 また,CRS児の受け入れ・支援の現状も紹介された。現在でも「医療機関によっては“風疹ウイルスの排出が終わるまでは受診できない”」と健診などを断られ,受診可能な医療機関を探し回るケースがあると話した。同氏自身も保育所での受け入れについて自治体担当者に相談したところ「CRSってなんですか」と逆に質問された経験を持つ。同氏は担当者に対し,専門家を招いて勉強会を開催,双方で情報共有することを提案したが「こちらにも医師がいるので,その必要はない」と断られた経験を紹介。その後,担当者からの連絡はないと述べた。 同氏は「9月末に感染研が自治体や医療関係者向けのQ&Aを発表したが,いつから行政と家族が相談できるのか,具体的に目標を明示してほしい」と早急かつ実効性のある支援体制の確立を求めた。
【第2回厚生科学市議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会及び厚生科学審議会感染症部会風しんに関する小委員会 資料】
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000026990.html

■国内の感染症発生状況
【RSウイルス感染症】
◆RSウイルス感染症の報告数が増えています

 RSウイルス感染症は乳幼児期において重要な疾患であり、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす場合があります。
 これまで冬期に報告数のピークが見られ、夏季は報告数が少ない状態が続いていましたが、2011年以降、7月頃から報告数の増加傾向がみられています。2013年の報告数は6月中下旬から徐々に増加傾向がみられ、特に8月から9月にかけて急激な増加がみられており、第44週(10月28日の週)の報告数は4,195例と6月中下旬以降で最多となりました。
 医療機関の皆様におかれては、RSウイルス感染症のまん延予防のため、情報提供・注意喚起等への御協力をいただきますよう、お願いいたします。

RSウイルス感染症に関するQ&A(平成25年9月25日)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku…


以上の情報は厚労省の感染症エクスプレスなどを参考にしています。




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 感染症・新型インフルエンザ対策担当
 TEL: 048-830-3572 ,3557 FAX: 048-830-4809
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文責・市町村予防接種担当者・医療機関向け医療保健相談
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埼玉県さいたま市岩槻区馬込2100 埼玉県立小児医療センター内
 埼玉県予防接種センター長  川野 豊(予防接種医療相談)
 TEL:048-758-1811  FAX:048-758-2626
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