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2025.12.10
狂犬病ウイルスによる感染症である狂犬病を予防するためのワクチンです。
予防のために予め受ける場合(暴露前接種)だけではなく、海外などで動物に咬まれて感染した可能性がある場合に発症を予防するために接種する場合(暴露後接種)もあります。
注意:ワクチンが入手しづらいため海外渡航の場合は、早めに専門機関にご相談することをお勧めします。
| 接種日の目安 | |
| 3回接種 | 0、7、21日又は0、7、28日 |
| 接種日の目安 | |
| 4回接種 | 0(接種部位を変えて、2箇所に1回ずつ、計2回)、7、21日 |
| 5回接種 | 0、3、7、14、28日 |
| 6回接種 | 0、3、7、14、30、90日 |
| ワクチンの種類 | 不活化ワクチン |
| 定期 / 任意 | 任意接種 |
| 商品名 | ラビピュール |
接種後の抗体反応は下図のようになります。
一過性の発熱・接種部位の発赤、腫脹、疼痛がみられる場合があります。
潜伏期間を経て、脳炎を発すると、発熱、頭痛、倦怠感などの風邪のような症状から始まり、興奮、錯乱、恐水症、恐風症などの神経症状を経て、最終的には昏睡状態に陥り、死に至ります。
数少ない剖検例では、右図のように、神経組織中に狂犬病ウイルスが確認されています。(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)
狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染した犬やコウモリなどの咬傷をうけて、唾液内のウイルスに感染し発症します。
咬傷部位でウイルスが増殖し、筋紡錘や神経終末部から神経線維内に侵入し、神経に沿って3mm/hrの速度で脳内へ伝播します。
この間は潜伏期(通常は20~90日)にあり、抗体から隔絶されています。脳内の神経細胞で増殖したウイルス逆に知覚神経や自律神経を伝って各臓器組織に広がるとされています。
ほとんどの狂犬病患者では、恐らくウイルス量が少ないため、初期には抗体反応は弱く、症状が出始めても中和抗体は検出されません。
ウイルスが中枢神経系に入ると、中枢神経系(脳や脊髄)はもともと、免疫細胞からの攻撃を受けにくい(免疫特権)ので、ウイルスは免疫による攻撃から保護されます。また、狂犬病ウイルスは、転写因子を介して、インターフェロンシグナル伝達を阻害し細胞性免疫を抑制します。
効果的なワクチン接種を行うと、細胞性免疫応答が誘導され、CD4 + ヘルパーT細胞と、十分な中和抗体が作られます。
・Plotkin's Vaccines, Eighth Edition
・狂犬病に関するQ&Aについて 厚生労働省
・狂犬病(詳細版) - 国立感染症研究所
・Vaccines (Basel) vaccines7030110. 2019
・予防接種に関するQ&A集(日本ワクチン産業協会)
Q1:イヌに咬まれました。狂犬病ウイルスに感染の危険性がありますか。
A: 国内では、輸入例を除き、ヒトでの狂犬病は 1956 年を最後に発生しておらず、動物では 1957 年が最後で、世界でも数少ない狂犬病清浄国の 1 つです。
Q2:過去に狂犬病ワクチンの予防接種を受けています。その後、海外で狂犬病媒介動物に咬まれても大丈夫ですか。
A: WHOでは、曝露前予防接種の履歴が明らかな場合には、既に免疫がある程度あることから、曝露後免疫は、接種初日(0日)と3日後の2回接種をすることとしています。WHO では、咬傷の程度に応じた対策方法を取るよう勧めています。(表「曝露の程度に応じた曝露後ワクチン接種」参照)
| カテゴリ | 接触の状況 | 対策 |
| Ⅰ | 動物に触れる、餌をやる、無傷の皮膚をなめられる | ワクチン接種必要なし |
| Ⅱ | 出血のない小さな傷や擦り傷、むき出しの皮膚をかじられる | ・創部洗浄 ・迅速なワクチン接種 |
| Ⅲ | 皮膚を貫通するかみ傷やひっかき傷、粘膜や傷のある皮膚をなめられることによる動物の唾液との接触、コウモリとの 直接的な接触による曝露(深刻な曝露 | ・創部洗浄 ・迅速なワクチン接種 ・必要に応じて免疫グロブリンを推奨 |
Q3:狂犬病ワクチンの互換性(交互接種)について教えてください。
A: わが国において異なるワクチンの交互接種は認められていませんが、参考情報として海外でワクチンの互換性を検討した報告を紹介します。
【2024 年現在、わが国で使用されている狂犬病ワクチンと海外で使用されているワクチンとの互換性】
狂犬病の疑われる動物に咬傷を受けた後に曝露後接種を開始し、途中でワクチンの種類(現在、わが国で使用されているニワトリ胚細胞不活化狂犬病ワクチン又はフランス製 Vero 細胞不活化狂犬病ワクチン)を変更した場合の免疫原性と安全性を検討した結果、接種開始14日後の狂犬病ウイルスに対する中和抗体価の幾何平均値は、全症例で WHOの基準(0.5IU/mL 以上)を満たしていました。
すべての被験者は健康であり、曝露後接種完了6か月後の健康状態に異常は認められませんでした。
Q4:狂犬病ワクチンの接種間隔が、用法・用量より長くなってしまった場合について教えてください。
A:わが国において用法・用量から逸脱したワクチンの接種は認められていませんが、参考情報としてワクチンの接種間隔について検討した報告を紹介します。
狂犬病ワクチンを曝露前免疫として、0、7、21 日のスケジュールと 0、28、56 日のスケジュールで筋肉内接種し、抗狂犬病ウイルス中和抗体の幾何平均抗体価を比較検討しました。0、28、56 日のスケジュールでワクチン接種した場合の幾何平均抗体価は、1 回目接種から 14 日目は 0.4 〜 3.0IU/mL、77 日目は 2.7~25.6IU/mL、2 年目は 0.3 〜 3.4IU/mL であり、0、7、21 日のスケジュールで接種した場合と同等の免疫原性が確認されました。
なお、WHO は「もし接種が遅れた場合でも最初から接種をやり直すことなく、曝露前免疫のスケジュールを再開し完遂すること」との見解を発表しています。
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