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この記事は平成24年6月2日に彩の国 予防接種推進協議会の役員である川野豊先生が講演した内容です。
1:今秋登場が予想される不活化ポリオワクチンは数種類あると思われる。
生ポリオワクチンからの移行が順調になされるよう配慮したい。
2:ロタウイルスワクチンは2種類ある。投与量・スケジュールが異なる。
3:ヒトパピローマウイルスワクチンには2種類あり、適応疾患が一部異なる。
◆ポリオとは
・ポリオは、ポリオウイルスが人の口の中に入って、腸の中で増えることで感染する。
増えたポリオウイルスは、再び便の中に排泄され、この便を介してさらに他の人に感染する。
成人が感染することもありるが、乳幼児がかかることの多い病気である。
・ポリオウイルスに感染しても、多くの場合、病気としての明らかな症状はあらわれずに、
知らない間に免疫ができる。感染者の約0.1%が典型的な麻痺型(弛緩性麻痺: AFP)を
あらわすにすぎない。
・しかし、腸管に入ったウイルスが脊髄の一部に入り込み、主に手や足に麻痺があらわれ、
その麻痺が一生残ってしまうことがある。
◆ポリオの臨床症状
典型的な麻痺型ポリオは、1-2日のカゼ症状の後、解熱に前後して急性の弛緩性麻痺が四肢に現れる(だらんとした麻痺)。麻痺の部分は痛みを伴うため、カ ゼで発熱したこどもが解熱し始めた晩に「背中が痛い」とうめき、翌朝突然下肢の麻痺が現われるといったことが多くみられる。麻痺型患者の約50%が筋拘縮や運動障害などの永続的後遺症を残す。定型的麻痺では、球麻痺を合併して嚥下障害、発語障害、呼吸障害を生じる ことがある。死亡例のほとんどは、急性呼吸不全によるものであり、死亡率は、麻痺型となった小児の約4%、球麻痺合併例や成人で約10%である。
◆中国でのポリオウイルス感染
・ポリオの感染は4カ国(アフガニスタン、インド、ナイジェリアとパキスタン)で流行が続いていいる。
・2011年9月1日、中国の保健省は、WHOに、1型野生株ポリオウイルスによる感染例4例を報告しました。分離されたウイルスの検査により、パキスタンで流行しているウイルスと遺伝的に関連していることが確認されている。
◆ポリオワクチンの必要性
・日本では、1960(昭和35)年に、ポリオ患者の数が5千人を超え、かつてない大流行となったが、生ポリオワクチンの導入により、流行はおさまった。1980(昭和55)年の1例を最後に、現在まで、野生の(ワクチンによらない)ポリオウイルスによる新たな患者はない。
・海外では依然としてポリオが流行している地域(パキスタン・アフガニスタン・ナイジェリア)があり、これらの国の患者からの感染により、タジキスタン、中国など他の国でも発生したという報告がある。
・ポリオウイルスに感染しても、麻痺などの症状が出ない場合が多いので、海外で感染したことに気がつかないまま帰国(あるいは入国)してしまう可能性がある。症状がなくても、感染した人の便にはポリオウイルスが排泄され、感染のもととなる可能性がある。
◆ポリオ生ワクチン予防接種の接種率の推移
◆ポリオワクチンと麻痺
・ポリオの予防接種を受けた人の中で、予防接種健康被害救済制度に申請し、ポリオによる麻痺と認定された人数は、2001(平成13)年度~2010(平成22)年度の10年間で、15人です。
・日本では、1年に概ね110万人がポリオの予防接種を受けていることから、100万人の接種当たり約1.4人に相当します。
◆ポリオワクチンと二次感染
・予防接種を受けた人と接触した人の中にも、ポリオと同じ様な麻痺などの症状があらわれることがある。
・このような2次感染は、2006(平成18)年度~2010(平成22)年度の間に日本全国で1人の報告があった。
・ポリオの予防接種を受けていないご家族など、ポリオウイルスに対する免疫を持っていない人は、ウイルスに感染する可能性が高く、麻痺の症状があらわれる可能性がより高いと考えられる。
◆生ポリオワクチンと不活化ポリオワクチンの違い
平成22年国立感染症研究所「ポリオワクチンに関するファクトシート」H22.7.7版を一部改変
◆わが国における不活化ポリオワクチンの開発経緯
◆不活化ポリオワクチン
・現在、日本国内で医師の個人輸入により用いられているIPVの大半は「野生型の強毒株( Salk株)」を由来としたものである。
・日本で定期接種ワクチン(DPT+IPV四種混合ワクチン)としての導入が予定されているIPVが経口生ポリオワクチン由来の弱毒株(Sabin株)である。
・従来のSalk株IPVを含む四種混合ワクチンも別の企業から申請中。
・単独不活化ワクチン(IMOVAX® Polio)に含まれるのはSalk株。(1982年からこれまで全世界に2億7000万本を供給)
◆今秋に登場が予定されている不活化ポリオワクチン
平成24年9月
・単独不活化ワクチン(IMOVAX® Polio) 野生型強毒株( Salk株)
平成24年11月以降
・DPT+IPV四種混合ワクチン 弱毒株(Sabin株)
・DPT+IPV四種混合ワクチン 野生型強毒株( Salk株)
◆不活化ポリオワクチンの接種間隔(案)
◆不活化ポリオワクチンと他のワクチンの接種について(案)
・生ワクチンを2回接種した者は追加接種は不要。
・生ワクチンを1回接種した者は、残り3回を不活化ワクチンを使用。
・DPTワクチンを1回でも接種している人は、原則、単独IPVを使用。
◆不活化ポリオワクチン導入後の生ポリオワクチンの位置づけ(案)
・不活化ポリオワクチンを定期の予防接種として導入した後、生ポリオワクチンを定期の予防接種には使用しない。
・国内で野生型ポリオウイルスまたは伝播型ワクチン由来ポリオウイルスが検出され、ウイルス伝播が想定される場合、当面は、現在製造された、または製造に着手されている生ポリオワクチンを使用することとする。
◆ロタウイルスの分類
ロタウイルスにはVP7で決定されるG型とVP4で決定されるP型の分類がある。全世界のロタウイルス胃腸炎発症の90%以上が、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、G9P[8]の5種類の組み合わせ株に起因している。もっとも多く存在する株はG1P[8]といわれているが、ウイルス株の分布は地域や年によりばらつきがみられる。
http://lovesbaby.jp/medical/vaccine/rotavirus.html
◆ロタウイルス胃腸炎による経済的負担
◆ロタウイルスワクチンの開発
・1998年に米国で初めてのロタウイルスワクチンRotashieldが開発され、150万ド―スが投与されたが、腸重積という予期せぬ副作用が発生し中断した。
・2006年に2つの生ワクチンRotarixとRotaTeqが、大規模な臨床試験の結果、有効かつ安全であることが報告された。
◆ロタウイルスワクチンの効果
◆RV5導入後の年齢別ロタウイルス胃腸炎入院の減少
◆ロタリックスとロタテックスの比較
◆ロタウイルスワクチンの接種スケジュール
◆他のワクチンと同時接種による影響
・ロタテック®内用液とHibHBVPCV7DTaPポリオ(不活化ポリオワクチン)を同時接種した乳幼児において、3回接種後14日目以降のロタテック®内用液によるロタウイルス胃腸炎に対する予防効果は89.5%であった。
・併用接種された海外既承認小児用ワクチン
・HibHBVヘモフィルスインフルエンザ菌b型ワクチンおよび組換え沈降B型肝炎ワクチン
・PCV7沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン
・DTaPジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、沈降精製百日せき三種混合ワクチン
・ポリオ不活化ポリオワクチン、経口生ポリオワクチン
◆サーバリックスとガーダシルの比較
◆サーバリックスとガーダシルの接種スケジュールの比較
◆サーバリックスとガーダシルの互換性
・安全性、免疫原性、有効性について2剤の互換性に関するデーターはない。
・片方を接種したあとに、別の片方のワクチンを接種することはできない。
・片方を接種したあとに、別の片方のワクチンを接種した場合、子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の対象からはずれ、補助がうけられない。
◆男性がHPVに感染すると
・男性がHPVに感染すると、尖圭コンジローマ、まれに肛門がん、陰茎がんになる。
・陰茎、陰嚢、肛門周囲、精液、尿道などから検出される。
・HPVの感染に関してはコンドームの予防効果は小さい。
◆男性に対するHPVワクチン
・米疾病対策センターはHPVに対するワクチンを、11~12歳の男子にも定期的に接種すべきと勧告した。男性においても尖圭コンジローマやがんの発症を抑える効果が期待でき、間接的に女性を保護できる。また、女子のワクチン接種率が伸び悩んでいることから、性経験前の男子に接種することで、女性側の負担を軽減することにもつながるとしている。
・HPVワクチン接種は男性同性愛者の肛門がん予防にも効果があるとの研究結果が、New England Journal of Medicineに発表された。
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